再生

最近、また歯医者に通っている。
昨日は、右上の割れた奥歯が、半分抜かれた。
歯医者では、治療のたびに、パソコンに取り込んだレントゲン写真を見せてくれる。顔の回りを半周するようにして撮影した、顔の下半分を平面にのばしたレントゲン写真だ。
歯医者とのつきあいの長い僕の歯は、上半分がほとんど神経が無く、金属の杭を並べて打ったようになっている。それはまるでできの悪いサイボーグのようだ。
以前から歯を大事にしておけば、こんな惨状にはならなかったのだけれど、強力な虫歯菌に感染していた僕の歯は、乳歯の頃から虫歯だらけで、永久歯が生える先から、虫歯になっており、毎年どこかが腫れて、歯根管を掃除する羽目になっている。
この調子では、自前の歯が無くなってしまうんじゃないかとの暗澹たる気分になる。

治療の合間にレントゲン写真を見て思う。
そこには、金属の杭やセラミックのクラウンのない、きれいな歯が二本、写っている。下あごの左右の端に一本ずつ、とんでもない方向を向いて歯茎に埋まっている。
『親知らず』。
僕の奥歯で健在なのはその二本だけ。
けど、それさえあれば、歯芽細胞から歯を再生し、いつかサイボーグ状態から回復する可能性があるんじゃないか。

そんなことを思いながら、レントゲン写真を見ている。
希望はある。たぶん。