さよならDM10

 初代のポメラである。
 最初はリターンキーの反応が悪くなった。効かなくなったのではなく、100字とか、200字とか打っているといつの間にか復活している。変換の確定や、改行ができないという点では不便でも、そのうち復活するから、まあいいや、という状態。
 次に、同じ症状が「W」キーに現れた。「を」が「尾」になってたりするので、復活後に修正か、他の所からのカトペでしのいでいた。
こんな症状が出始めてから、2週間。ついにリターンキーが効かなくなった。
もともと、キーボードの開閉が引っ掛かり気味になっていたり、「N」がすり減っていたりで、そろそろ限界だったのだけれど、リターンキーが効かなくてはファイルの保存ができない。ファイルの保存ができなければ、書いたものをパソコンに移すこともできないので、ことここに至って後継機の購入を迫られる事態になったわけである。
 初代の購入が、多分、新人賞をもらう直前で、SFJに書いた「冷たい雨」の冒頭15枚程度は、ポメラで書いている。それからも、PrologueWaveに書いたものや、SFJの「冬の星のジュノー」、ゴミ九十九神もDM10から生まれた作品だ。ちょっとした断片を書いておくツールとしては、これほど便利なものはなかったし、8000字の字数制限だって、一度、慣れればほとんど気にならない。最終的な作品の推敲には使えないけれど、アイデアを形にするには、便利なツールだった。
 後継機には少し迷った。DM10は、電源を切るとカーソルがファイルの先頭に戻ってしまうという問題があり、買いなおそうとは思わなかった。候補は、最新型のDM100か、DM20。バックライトがついていたりと、機能的にはDM100の方が優れているのだけれど、店頭で手に取った時点で却下。片手で持った時の、安定感が全然違う。
 DM10やDM20で可能な、左手の親指をディスプレイの端にかけ、手のひら全体がキーボードの下に来るようにホールドする持ち方が、DM100ではできなかった。僕はポメラをテーブルに置いて使わない。大抵が、左手で持って、右手で入力するスタイルである。そうなると、いかに片手でちゃんと持てるかが死活的に重要なのである。
 今、手元にはDM20がある。DM10に比べてわずかに厚く、黒いキーボードには慣れないけれど、使い勝手は先代と同じ。
 そんなわけで、そのうち、2代目ポメラで書いた作品が世に出るはずである。だからといって、何が変わるわけではないと思うが。
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